「ほら、ぼーっとね、してると、あ、世界があるな、て思うじゃない」

世界あれ、とつぶやけばそこには世界がある。

つぶやいた本人は、世界ができてからその世界を作ったのは自分だと気がつく。

そこになんの矛盾もなく、存在とは無矛盾性のことだとする向きもある。

従ってそこには世界を作った少女がいた。

 

冷蔵庫からコーヒーと牛乳のパックを取り出し、てきとうな割合でコップに入れて混ぜる。

一口飲んでその甘さと苦みに脳がしびれたような感覚を覚える。

 

ざ、ざ、ざ、ざ、と波の音がする。

だけどどこを向いても海は見えず、ただ砂地がえんえんと広がっているだけ。

僕は海を見たかった。だからここまでやってきたけれどさすがにうんざりしてきた。

せめて相棒がいれば、と思った僕は、自分の体の一部を引きちぎり、流れ出る透明の体液で砂を湿らせると、それをこねて人形を作る。

できた泥人形はすっくと立ち上がりどこかへ歩き出す。

そして僕を置いて行ってしまった。