ねえ私は良い子だったでしょう?

たずねる君は愚かでかわいそうな子だったよ

ころころ転がるその玉だあれ?

でも本当に何もしたくなかったんだ

ただ眠っていた

それで何を待っていたの?

 

知らない、知らない、もうどこでもないんだ

一辺25メートルの立方体の端で

足をぶらぶらさせて

 

これは文字です

これは文です

これは本です

では私は何でしょう

 

そして僕たちは別れた

ただそれだけの邂逅

 

僕は走っていたけれどどこにも行けずに仕方なく海へ飛び込むと君の姿をそこに見て僕はどこかに行けるのかもしれないけどでもそれって終わりなんじゃないかな

 

「なんかさ、ない?」

「こないださ」

「うん」

「何もなかった」

「ないのか」

「うん。"何もない"しかないの」

「"何もない"だけはあるんだ、良かったね」

「ふふふ」

そして君は笑った。私も笑った。

 

「何も終わらないし何もかもが終わっていくけれどそれって何か悲しいことなのかな?」

「終わってほしいと思う? 何もかもが。世界が」

「うん、終わってほしい。でも終わってほしくないかもしれない。世界が。私が。いなくなりたいし、だけどいたい」

「いつか終わるけど、すぐには終わらないよ、きっと」

「そう、それは悲しいことなのかもしれない。悲しいことって、悲しいよね」

「嬉しいことかもしれないよ」

「そうだね、悲しくて、嬉しい」

 

「私、"かなた"に行きたいんだ」

「"かなた"? "かなた"ってあっちの方ってこと?」

「ううん、あっちって決まってるわけじゃないの。どこでもない場所なんだよ」

「どうすれば行けるの?」

「私が連れていってあげるよ」

「うん、一緒に行きたい」

だけど私たちは今もここにいる。